ジャーナリストの青木理氏は、ゴー宣道場(2016.7.10 第56回「民主主義という病い」)に登壇されたこともありますが、思想的には左翼で、私も批判的に見ることの方が多かったのですが、今日発売の週刊現代5月18日・25日合併号に掲載された文章には、完全100%同意してしまいました。
連載コラム『ジャーナリストの目』、タイトルは
『頑迷な右派が拘る「男系男子」
非現実的な与党案が
天皇制を滅ぼしかねない』
文章の冒頭で、青木氏は自分の立場が「天皇制反対」であることを明らかにしています。
その上で青木氏は、世論調査ではおおむね8割の人が象徴天皇制を「あった方がいい」と肯定的に捉えていること、そして、それにもかかわらず現状の「男系男子」限定では「皇位継承それ自体が危機に瀕し、天皇制は持続可能性すら疑われている」と指摘します。
そして、その対策ということで「有識者会議報告書」が提出され、それを与党が「妥当」と評価しているわけですが、その報告書に書かれた2案、
①女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する
②皇族の養子縁組を可能とし、将来的には旧宮家の男系男子を皇族に復帰させる
について、青木氏は「頑迷な党内右派の思惑も露骨に滲む」と評しています。
青木氏は①を「将来の『女系天皇』につながる芽を断固排除したい、という意志の表出」とバッサリ。
そして②については
「戦後 80年近くも民間人として暮らした者を皇族とするのが果たして現実的か。そもそもそんな人物がいるか、仮にいても、『国民統合の象徴』として人びとに受け入れられ、広く『親しみ』を得られるか」と、大正論!
そして、「頑迷な右派を抱える与党は問題をさらに先送りせざるをえず、先送りしたいのが本音でもあるだろう」と評します。まさにその通り!
その上で青木氏はこう書きます。
「悠仁親王が将来結婚すれば、妃は男子出産を強烈に求められる。果たしてそんな女性が現れるか。現れても、実際に男子が産まれるか。それ以前の問題として、そのような皇室のありようは異様にすぎないか。」
これも本当にその通り!
そして、青木氏はこのように結論付けています。
少々長いですが、全くその通りなので、そのまま引用します。
再び近年の世論調査を眺めれば、「女性天皇」でおおよそ 9割、「女系天皇」も 7割超の人が容認している (前述・共同調査 )。仮に天皇制をこの国の「伝統」として肯定するにせよ、時代や社会状況に合わせて変化できない「伝統」などに持続可能性はなく、本来はそこに知恵を絞るのが「保守」の要諦のはずだが、世論にも背く頑迷な右派にはそれがわからない。
だから「男系男子」という古色蒼然とした観念にしがみつき、天皇制は一層深刻な隘路に嵌まりこみ、最終的には私の立場に近づいてしまうかもしれないのだから皮肉というしかない。
まさか青木理氏の文章にこんなに何度も「その通り!」と書くことがあるとは思いもしませんでしたが、左翼の青木氏の方が、自称保守の男系派よりもずっと「保守とは何か」をわかってます。
青木氏は、自称保守の主張が自分の「天皇制反対」の主張に都合がいいということをわかっていますが、自称保守は全くそれに気づいてもいません。
戦後長いこと、日本の言論界は左翼がメインを占め、保守はマイナーな地位に甘んじていたわけですが、それは必ずしもGHQの洗脳のせいだけじゃないような気がします。
左翼の方が自称保守に比べれば、まだずっと頭が良かったという原因の方が大きかったのではないでしょうか?